2004年06月15日

人口減少時代に向けて

先週、NRI「知的資産創造」4月号がWeb上で公開された。
人口減少時代の到来と労働市場の国際化」、「ベビーブーマー・リタイアメント」の2つがすぐ先に控えている大きな社会構造変化について考えるキッカケをもたらしてくれる。
(なお、ベビーブーマー~の方は分厚いだけで内容が薄いので読む必要性なし)

少子高齢化予測

国内の人口について語る時はおおかた上のグラフ(世代別人口比率予測)にあるような「少子・高齢化」が話題にのぼる。

2000年人口ピラミッド 2020年人口ピラミッド 2040年人口ピラミッド

そして、このような人口ピラミッドの推移を見せられると、高齢化・少子化の印象が一層強くなる。

しかし、同様もしくはそれ以上に重要なのは、今後人口が徐々に減少していく「人口減少の問題」である。
1.29ショック(2003年の出生率が1.29に低下)からも明らかなように、2006年を境として人口は減少に向う。
ミクロのビジネスレベルで見れば、顧客ターゲットを高齢化対応する(旅行、介護、医療など)など新たなチャンスも広がるだろう。
しかし、経済全体のマクロで見るとGDP成長率は余程の事がない限りマイナスになり、それに伴い価値観における大きなパラダイムチェンジが必要となる。

NRIの「人口減少時代の到来と労働市場の国際化」は、不足する労働者層の穴埋め要員として外国人労働者を受け入れることが必然であり、またその状況に対する心構えが必要と説いている。
人口減少と高齢化が同時に起こるため、総人口の減少率よりも労働力人口の減少率は遥かに高くなり、労働者不足は日本経済において深刻な問題となることは間違いない。そして、その解決策である外国人労働者の受け入れは必然として捕らえるべきであり、今後将来、外国人労働者比率が高くなり街中に外国人が溢れ、場合によっては治安が悪化する可能性があることを今から覚悟しておく必要がある。
ただし、外国人労働者の受け入れはパラダイムチェンジの一つでしかない。

人口が減少し、経済が縮小する状況下においては、多くの企業において売上高増加を見込むのは難しくなり、一層の利益重視経営が余儀なくされる。労働生産性の向上が経済成長低下を少しでも食い止める頼み綱となるため、企業の給与体系は益々成果主義色が強くなり、労働者層ではプロとその他という2極化が進むかもしれない。
また、企業の売上の内訳は内需よりも外需の比率が高くなるため、全ての産業において国際競争力が求められる。
縮小経済下では公共投資による民間投資の誘発率が低下するため、公共投資の存在価値そのものが問われるようになる。
人口が減り、経済が縮小すれば土地は余り余剰地が増加し不動産価値は確実に低下していく。労働者が減るので当然ながらオフィス需要も低下する。そして国内の金融資産は成長が見込める海外に流出することになる。
もはや不動産は資産では無くなるかもしれない(特に地方・郊外)。

人口減少問題に対する見方は人それぞれで、非常に楽観的に見ている学者も存在する(あくまでも、需供バランスが保たれ、設備投資、固定費を逐次調整していくことが可能、更には技術進歩による労働生産性向上と余暇時間の増加とそれに伴う個人消費の拡大、を前提としているが)。

楽観的にみるか、悲観的にみるかは個人の自由であるが、その中に多くのパラダイムチェンジが求められることは確実で、日常生活、ビジネスにおいて、この人口減少という問題を念頭に置くことが非常に重要である。


なお、あまり他人に教えたくはなかったのですが、未来の予測についてはアクアビット社未来社会予測レポート(ppt版)がキレイにまとまっていて非常に参考になります。興味のある方は是非ご覧下さい。

人口減少社会のマーケティング―新市場を創る9つの消費行動 「人口減少経済」の新しい公式―「縮む世界」の発想とシステム