2003年12月17日

インターネット、一極集中によるリスク

今月19日にマザーズ上場予定だった株式会社ディップが、上場日を僅か4日後に控えた12/15に上場日延期を決定した。
理由は、世間では何故か話題性に乏しい「Yahooがリクルートとネット求人事業を共同展開する」ことを、投資家に周知徹底するため。とのこと。
目論見書にもYahoo!の影響については既に触れているので「?」と思わざるを得ない。
エン・ジャパンの先行事例(転職サイト運営では後発にも関わらず、高いシェアと収益を誇る)もあったので、さぞかし投資家からの期待は大きかったことだろう。

さて、ディップのサイトにあるリリースによれば、Yahoo!経由の応募者比率は23%である。
Yahoo!との契約内容が判らないので、売上など財務面に与える影響は明らかでないものの、この段階で延期というところを見るとダメージが相当大きいのは間違いない。
昔の会社の先輩がやっているOPPOは大丈夫だろうか?と余計な心配までしてしまう。

話は変わるが、今月2日にYahoo!、goo、infoseekの検索サービスが立て続けに利用出来なくなった(参考記事)。
直後は、各方面でGoogle関連のトラブルか?と思われていたものの、Google本体、及び他のGoogle連携サイト(Excite、BIGLOBE、Nifty、等)は問題なく動いていたので、本当の原因が気になっていた。

後程、Excite井上さんのBLOGを見て納得した。

  • Yahooが何らかの原因で検索できなくなった
  • Yahooの代わりとしてユーザーがGooやInfoseekに流れ込んだ
  • 想定外のトラフィックが来たため、Goo, Infoseek共にトラフィックに耐え切れずに落ちた
  • ユーザーはその他のサイト(Google本体、エキサイトなど)にも行ったが、それらのサイトは思ったほどトラフィックの増加にはつながらなかったので、全く問題なく運用が出来た

上記で井上さんも指摘している「大手ポータルサイト依存のインターネットの脆弱性」、この内容はとても重要に思う。
下のグラフを見て欲しい。
これは、日本におけるドメイン別PV数のパレート分布である。
(便宜上、PV数が多い上位1000ドメインを対象にしている)

ドメイン別PV数 パレート分布

グラフにある吹き出しを見ればわかると思うが、80%のPV数を上位13.1%のドメインで占有している。
パレートの法則では80:20、つまり80%のPV数を20%のドメインが占有、ということなので、PV数においては上位ドメインに分布が偏っていることが読み取れる。

しかし、もう一度グラフを良く見て欲しい。
35%あたりから赤い曲線がスタートしている。
そうです、これがYahoo!のPV比率である。

Top1000ドメインの中での占有率が、Yahoo!だけで36.2%に達している。
(手元にあるTop1660ドメインの中だと占有率は35.4%)
この36.2%という数字は(検索も同比率とは限らないが)、先日起きた「複数検索サイトでの連鎖サービスダウン」、井上さんの指摘する「大手ポータルサイト依存」を説明するに十分な数字だと思う。
つまり、今ネット業界で起きている問題とは「大手ポータルサイト依存」ではなく、もはや「Yahoo!依存」と表現した方が適切であろう。
話を戻すと、先の「Yahooがリクルートとネット求人事業を共同展開」、その結果「ディップ上場延期」というのは、この「Yahoo!依存」現象の悪い側面を如実に表していると思う。
ネット初期にはインターネットは蜘蛛の巣(実に懐かしい表現です)構造になっているため、分散、平等、などと様々なメリットが方々で語られていた。
しかし、世帯普及率も50%を越え、ようやく一般化してきた現在、インターネットの構造は極度の一極集中となってしまっており、多大なるリスクを背負い込むこととなっている。
サイトのみならず、回線も同様のことが言えるだろう。
大手キャリアが保有している回線(NTT、KDDI、等)に障害が発生すると、インターネットは機能しなくなる。
蜘蛛の巣状になっており回避ルートがあるのは事実だが、大手が背負っているトラフィック(キャリア系の人はトラヒックとも言う)を担うだけに見合ったキャパシティーは到底ない。

このままでは本当に危険です!!!

例えば、「情報」。これまでは横並びと言われながらも複数メディアが常に対立してきた。
ラジオ、新聞、TVしかりである。
かつて日本の検索エンジンのシェアを調べたことがあるが、その時(本年1月時点)にはgoo、infoseekがまだGoogle陣営に入ってなかったが、それでも78%のユーザーがGoogleを利用していた。
(ただし、50%のユーザーは2つ以上のエンジンを利用していた)
しかしGoogle系以外に選択余地の無い現在、「情報」検索はGoogleの判断がすべてを握ってしまっている。
Googleを乗っ取ってしまえば、テロ等いとも簡単に出来てしまう。
政治活動するにも最適であろう。


最後に、折角の機会なので、先程のドメイン別PV数のパレート分布グラフからYahoo!を抜いたもの(青い線)をご覧頂こう。

ドメイン別PV数 パレート分布

私には、こちらの分布の方が自然に見える。(少なくともパレートの法則には近付いている)

この問題、皆さんはどう感じますか?